2017年 stage7










2016年 stage6

アクザワアイ(6期):ビジネス・実用書

 

ビジネス書の装画を制作するにあたり「ビジネス書とはこうである! 」というイメージがなかなか抜けませんでした。

そのため初期のラフは固くつまらないものばかり。

おもしろい作品を作りたいという思いとは裏腹に、自分自身は楽しくない、苦しい日々が続きました。

何回目かに提出したラフから方向性を見出していただき、大体の完成形をイメージすることができるようになったことで、

ようやくホッとし、気持ちが楽になったように思います。

 

この絵に登場する宇宙人=コミュニケーションが取りづらい相手の象徴です。 

「この本に出てくる会話の基本を押さえれば、宇宙人ともコミュニケーションをとることができる」をコンセプトに制作しました。

 

ビジネス書の装丁は本来、タイトルを大きく! 絵は小さく! が常例だそうです。 

なので、このように絵が全面に押し出されたデザインになることはほとんどありません。

ましてや私なんて駆け出しも駆け出しのイラストレーターですので、このようなデザインになることは夢のまた夢でしょう。

今回装丁を担当してくださった宮川さんには足を向けて眠れません。 

 


安藤貴代子(6期):ビジネス・実用書

 

・ビジネス書はポジティヴでワンランク上を目指す人が読むもの。 

・最後の晩餐のポーズのままにスーツの人を描き、会話を表現しました。 

 

1 読了直後のラフでは老若男女の顔を並べました。色味はハッキリ、ビタミンカラーを配色しました。 

 しかし、会話スキルの本なので会話を表現するように指摘されました。

 

2 会話なので3人以上配置してみるも、構成も人物も表現しきれません。

 

3 ビジネス書チームで打ち合わせ。宮川氏の提案で、それぞれ描きたいものを描くコンセプトになりました。

 私は「人物」を希望。ビアズリーのようなな、装飾的な人物画の提案を受ける。

 私もビアズリーが好きなので挑戦しました。4 資料を集め、かなりラフを描きました。

 しかし、私と宮川氏の認識のズレが埋まらず時間がなくなる。

 

5 再打ち合わせ。レイアウトの不配慮を指摘される。宮川氏から提案のあった会話の図像の中より映画ポスター的、

 アテナイの学堂等々から、最後の晩餐のパロディを選んだ。

 

6 最後の晩餐のポーズに自分なりのデフォルメをして完成。


しんやゆう子(6期):ビジネス・実用書

 

普段あまり手に取る機会のないビジネス書。

イラストレーションに興味がある人にとって、本を選ぶときに装画はとても重要な要素で、

装丁買い(アナログ盤レコードにおけるジャケ買いのような)をする人も多いと思います。

でもビジネス書を買う人は装画よりも、題名や著者名、内容を見て「その時の自分に必要な本」を選ぶのではないかしら。

作品としての美しさよりも、類似した本の中で目を引くアイデアやキャラクターの魅力が、

ビジネス書の装画では重要なのかもしれない。

 

ビジネス書の装画にロマンはあるのか? というところからスタートした制作でした。

第1段階ではビジネス書を意識したアイデアを提出。自分で出しておいて何だけど、本当にこの方向で進むのかな……これでいいのかな……とモヤモヤしていた頃、打ち合わせで宮川さんと話し合って、描きたい絵とビジネス書装画の間の着地点が、ようやくみつけられたように思います。

 

パターンを描くことが好きで、人物も描いていきたいので、これまでもパターンと人物を組み合わせてイラストレーションに出来ないか考えていました。今回の課題では、素材としてパターンと人物をたくさん描いてお渡ししました。


有馬奈保美(6期):文藝(日本文学)

 

『春の庭』は2014年の芥川賞受賞作です。表紙は具体的な場面の切取りにせず、「書店で手に取ってもらえるように」、

「フワッとイメージを伝えられるように」と意識して描きました。

〈プレゼン初回〉

ラフ1:室内から見た庭の構図。春の草花が自生した様子を描く。

ディレクション

① 説明的になるので小説に登場する木はなくて良い。遠近感を意識せず、平面的に草花のみを散らしてはどうか? 

② 上下左右、トリミングしやすいよう大きめに描いてみる。〈プレゼン2回目〉

 

ラフ2:ディレクションを反映して丁寧に描く。その後、計5枚のラフを提出するものの、草花の種類・配置を変えただけの同様のアプローチだったので、配置とバランスの良いラフ2がそのまま本描きとして採用される。

 

文藝チームミーティング:ソデ用に軽いタッチのカットを追加提出。 

 

純文学書を読み解くこと、その内容を様々なパターンのラフに起こすことは難しく、結果的に抽象的な装画になりました。

見る人が手にとって下さり、表紙からどんな物語だろうと想像していただけると嬉しいです。

 


柿崎サラ(6期):文藝(日本文学)

 

「春の庭」というタイトルですが、庭の様子は読者の想像に任せたいと思い、庭は絶対に描かない! 

と決めて取り組みました。 

代わりに、庭を取り巻く環境を描くことにし、家や外壁、初夏の日差しによって落ちる木陰を描きました。

 

物語の舞台が住宅街だったこともあり、ラフで煮詰まったときは、近所を散歩してみたりしました。

途中、モチーフを変えたラフもいくつか提案しましたが、最終的には初回のラフを元に進めていくことになりました。

 

表1と表4のバランスや、帯との関係をつかむのに苦労しましたが、最終ラフを提出するころには、少しつかめてきたかな? 

と感じています。

 

身近なモチーフですが、地味な印象にしたくなかったので、思い切って空を黄色にしてみました。

春と初夏のちょうど間、をイメージした色合いにしています。 

講師の関口さんとやり取りをしていくなかで、どんどん研ぎ澄まされ、シンプルで、気持ちのいい、理想としていた装丁になりました。

本の内容もそうですが、読むぞ! と気負わず、軽い気持ちで(笑)手にとっていただきたいです。


京極あや(6期):文藝(日本文学)

 

今回「真珠夫人」の作画にあたり、まず夫人というキャラクターを強く、激しく、そして自分なりに魅力的に描く難しさの

壁に当たりました。

関口さんからは「京極さんの真珠夫人を描いて欲しい」と言われいつも通りに描けば良いのに、どうしても「ゴージャス」「大正」「美人」という固定概念が抜けきれず、説明的になったり、ありきたりのスリムな美人しか描けなかったり、

挙句の果ては妖婦でなく娼婦になってしまったりでかなり苦戦しました。

 

そして何度もラフを重ねるうちに、ふと女性が二人抱き合う絵が浮かび「これが夫人と美奈子だったら夫人の表情はこうで、

手はここらへんにおいて、ポーズはこんな感じで……う~ん、レズっぽいし、どうだろう?  

でもアイディアの一つとして出してみよう」と出したものがやっとOK。

 

そこから一気に真珠夫人のイメージが膨らみました。

京極星に住むちょっとグラマラスな真珠夫人として、見る方にオリジナリティや面白さを感じてもらえたら幸いです。

 

 


柴田舞美(6期):文藝(海外文学)

 

 

はじめのラフを作るとき上下巻なのでどこかでセット感を出したいと考えました。

セット感を出すべく水平線の位置を合わせて違う場面を描いていましたが、アドバイスをいただき変更しました。

 

【上巻】

乾燥した大地。何かが起こりそうな、不穏であやしい感じ。この上下巻の絵を描く時、なんとなく色のグラデーションの差で

見せられないかなと思っていました。

しかし、色だけの状態だと「収穫の季節」のように見えてしまうと指摘を受け、ひび割れをいれました。

たしかに。一気に乾燥感が出ました。空の色もあやしい感じを出すべく、途中で水色からピンク系に変更しています。

 

【下巻】

雨は雨だけど、明るい恵みの雨。空の色を灰色っぽい空から明るさが出るよう白っぽく変更しました。

雨にぬれて緑と雨のにおいがする感じを出したいと思って描いていました。

 

上下巻とも「風景+何か」で、「何か」が途中上下巻とも家だったり、登場人物を入れてみたり、車の影を入れてみたりしましたが、最終的には家と泉になりました。

アドバイスをいただきながら要素を足していった結果、物語らしさが出てきました。

 


まいまい堂(6期):文藝(海外文学)

 

この小説は「泉」と名付けられた、涸れることない泉と川、森、畑のある豊かな土地で起こる事件を描いたミステリーです。

ミステリーの世界観へ引き込むために、木立の間から泉を覗くような奥行きのある構図にしました。

植物、水、光の様子が美しいのに、どこか不穏な雰囲気になるように気をつけました。

 

この構図になるまで、色々考えラフを重ねましたが、やればやるほど迷ってしまいました。

森全体をカバーに落とし込もうとしたり、女性と泉をクローズアップしたり…。

4度、藤田先生にラフを見て頂き、最終的には2度目にチェックして頂いた1案を、先生が修正して下さって、そのラフを元に構図を完成させました。

 

そこで方向性が定まったのに、その後またもや迷ってしまった私に、この構図がどういう意図を持つものなのか、

先生が解説して下さいました。

自分で描いておいてわからなくなってしまって、どうしようもないのですが、その解説の鮮やかさに、やっと納得して先に進むことができました。あの時はとても嬉しかったです。

 

宮川いずみ(6期):文藝(海外文学)

 

ポイントは、シリアスなドラマを上下巻セットでどう描くかにあった。

 

第1案:上に主人公ルースの世界、下に夫マークの世界を描こうと考えたが、

「ミステリーの要素が足りない」「これは女性たちの物語、登場する女性を描くべき」とのアドバイスを受ける。

 

第2案:上下並べた時、泉が中心にくるよう配置。

泉を囲んで上にルース、下にその他の女性たちをシルエットで描いた。

「人物を特定しなくてよい」「物語を感じとれるように」ということで対比の方法も含め考え直すことに。

 

第3案:上では何かに縛られ(あるいは、そこに救いを求め)動けずにいる女性。

下では自ら立ち上がり外の世界へ駆け出す女性を、植物の生命力と共に表現。この案に決定した。

 

そこからは紙版画で私が今できることできないことを見極め、絵作りに集中。

今回は絵をいくつかのパーツにわけて製作。最終的にPCで構成、色付け、微調整を行い完成させた。

「絶望」と「希望」、物語のどろっとした怖さを描けただろうか?

 


高橋郁恵(6期)人文

 

 

本の内容が特別支援教育に関してなので、ネガティブな感じにはならないように、どちらかといえば明るいイメージで

作っていきたいと思いラフの制作を始めました。

 

ラフ出しの際は教育関係とのことで非常にかたく考えてしまい、最初のラフプレゼンテーション、ブラッシュアップ後のプレゼンテーションと回を重ねてもなかなか自分らしいラフが出せずに最初の段階で行き詰ってしまいました。

 

打ち合わせの際に臼井先生から「自由に、装画を意識しすぎずに」とアドバイスをいただいて、もっと柔軟に考えることができるようになり、やっと自分らしい世界観のラフが描けるようになりました。

 

もう一度ラフを数案提出し、先生にディレクションしていただき「海でジャンプしている魚と子ども」、「ひまわりの間を走る子どもと犬」で進めていくことになったのですが、実際に本画を描いてみるとうまく表現しきれない部分があり、先生と相談して最終的に子どもの顔をアップにして迫力のある装画にしていくことになりました。

 


夏目麻衣 (6期)人文

 

まず初めに描いたラフは、今回の絵とは全く違う、繋いだ手をアップにして描いたものでした。

「手を取り合って行こう」というようなイメージが先行したのがきっかけです。

そんなこのラフに対しての講評はというと、講師の皆さんが揃ってウームと唸り、色々なお言葉をいただいたのですが、

私の胸にガツンと刺さったのは「この本を必要とするような人にとっては、この絵はおせっかいだと思われるかもしれないよ」

との一言でした。

 

その後もう一度、講評時の言葉を心に留めつつ本書を読んでみることに。

すると、「様々な子どもたち」と「成長」という以前とは違ったイメージが湧きました。

早速ラフを描き直して臼井先生にお見せしたら「この感じでいきましょう」との事に。

 

「様々な子どもたち」はそのままに、「成長」は色々な種類の植物に。

明るく、手に取りやすいような、色鮮やかな画面を目指しました。

一番初めに描いたラフからいろんな道を経てこの絵になりました。

今回本描きとして制作した絵からは、それぞれの子どもたちが自由に成長していく空気を感じて頂けたら嬉しいです。

 


山口鈴音(6期)人文

 

 

私は、著者が出会った、たくさんの子ども達の日々の生活や行動が詳細に書いてあるこの本の中で、子どもが自然とする行動や可愛らしい仕草を引き出せるような状況を描きたいと考えました。

 

そのため2つ出したラフの中のひとつでは、知育玩具を使ってこどもが遊ぶイメージを元に特定した玩具ではなく、シンプルな形と子どもを組み合わせることで表現しようと思い、幾何学図形を入れました。

そして幾何学図形をモチーフにかくれんぼをしているような隠れる動きや手を出したり、覗いたり、座るといったシーンを描きました。

 

もうひとつの案では、生活を送る上で複数の子ども達が関わることによる行動と仕草に注目しました。

複数であることで起こる子ども達の動き、その動きに合わせ自由に形が変化する布というモチーフを使用し、一緒に布にくるまる子どもや一人で使うなど同じ布を用いたそれぞれの違いを描きました。

 

そこからラフにおいて指摘していただいた、子ども一人一人の個性を考えるということ、私が描く子どもが幼いため年齢を上げる、ということを踏まえ完成に向けて描きました。